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心理療法システム編
第12巻 短期的力動精神療法
Short-Term Dynamic Therapy
ドナルド・K・フリードハイム博士
Donald K. Freedheim, PhD

監修:S・マーフィ重松(東京大学助教授) 監修・翻訳:岩壁 茂(お茶の水女子大学助教授)
■VHS ■日本語字幕スーパー ■収録時間:37分 ■解説書付

■商品コード:VA-2012 ■¥48,600(税込)
近年、精神分析療法における最も目覚ましい進展の一つに短期力動療法がある。これは、単に治療にかかる時間を短縮するだけにとどまらず、新たな治療概念、心理査定法、技法やかかわりの発展にまで至っている。古典的な精神分析と異なり、クライエントの防衛との対決、焦点付けなど治療者が積極的な介入を行い、「修正感情体験」を促進する。特に、治療早期からクライエントの防衛と対決することによって転移感情を高めながら、同時に作業同盟を確立するやり方は、他の治療方法には見られない必見の技法である。

ドナルド・K・フリードハイム博士
(ケース・ウエスタン・リザーブ大学準教授)
ドナルド・K・フリードハイム博士について

ドナルド・K・フリードハイム博士は、ケースウェスタンリザーブ大学の準教授である。デューク大学より臨床心理学で博士号を取得後、ボストン小児医療センターにてインターンとして勤務し、これまでにアメリカ心理学会、心理療法部会(29部会)の会長、専門誌「セイコセラピー(Psychotherapy : Theory, Research and Practice)」の編集長を10年に渡り務めた。また専門誌「プロフェッショナルサイコロジー(職業心理学:Professional Psychology : Research and Practice)」を創刊し、近年アメリカ心理学会の創設100周年を記念した「心理療法の歴史:変容の一世紀(History of Psychotherapy : A Century of Change)」を編集した。今日まで30年以上に渡り、個人開業を続けている。



短期的力動精神療法(STDT : Short-Term Dynamic Therapy)の概要

短期的力動精神療法(STDT)は、精神分析的療法と同じ基本原則を採用するが、介入法とセラピーの目標の二点においていくらか異なる点がある。

STDTの目的は、人生の様々な出来事や常に進行する体験がどのように心理的問題と関わるのかという洞察に患者が達するのを援助することである。支持と指示は、患者が困難な葛藤を乗り越えるのを助けるので、セラピストと治療同盟を築くことも重要である。

セラピー初期に、セラピストは、症状の形成とそれに関わる患者の防衛機制、抵抗、転移、それ以外の力動的諸問題の解釈を行う。

STDTのセラピストは、古典的精神分析よりもより積極的な姿勢をとる。治療早期より防衛機制の同定と解釈を行うことによって、心的力動が症状形成においてどのような役割をもっているか、また、治療過程が進むにつれてどのような心的作用が起こるかということに関する患者の理解を促進する。

STDTアプローチを採用するセラピストは、患者が抑圧したり、不適切なやり方で行動化したり、ただ受動的に迎え入れて非活動的な状態に陥ってしまう思考や感情を同定するが、それらの事柄に関する対話は信頼に基づく治療関係においてはじめて可能となる。患者が解釈を受け入れるかどうかは、セラピストとの治療関係の質にかかっていると言える。つまりセラピストの解釈は、暖かさ、理解、そして共感の関係において、最も快く患者によって受け入れられるのである。感情の除反応や陰性感情反応は、一定の限度内において促進され許容されるが、主に患者の問題を扱うための治療関係が適切であることを指摘するために使われる。

またSTDTにおいて、制止された行動や抑うつ気分は、表出することがなく抑圧された感情を隠す覆いとして解釈され、患者は、過去に解決されなかった苦痛を伴った出来事や気持ちを再体験するように促される。現在見られる症状に先行する出来事を同定することにより、より根の深い心理葛藤が呼び起こされるのである。

さらに、治療関係における転移はSTDTの過程において重要な役割をもつ。つまり転移関係は「当然起こりうる早期の対人関係からの一般化である」と指摘され、心理療法の終了とともに患者がセラピストの喪失を予期することも転移として扱われる。

基本的に0は10セッション以内に完了するが、患者の提示する問題の力動的性質によっては、20セッション以上を要することが稀ではない。



クライエントの素性

■ドローシー
■年齢:58歳
■性別:女性
■人種:白人
■婚姻関係:35年間の結婚生活のあと、55歳で夫と死別
■職業:コンピュータコンサルタント
■教育歴:工学修士 コンピュータ工学
■両親:両親ともに死去:母親は、3年前に他界、父親は5年前に他界
■兄弟姉妹:妹一人(近縁でなく、ほとんど会わない)
■子供:息子、アダム(37歳):娘、アン(32歳):息子の嫁、リサ



関連する出来事

2週間前、娘がドローシーの様子を見にやってくると、家は散らかり、ドローシーはローブを着たままの姿で、「魂を抜かれたような」様子で、テレビの前に座っていた。娘もドローシー自身もその姿に目を疑い、彼女は娘に促されてセラピストに電話を入れることとなった。

ドローシーは6週間ぐらい「不調」が続いており、良く寝られず、絶望感にふさぎ込んだり、興奮状態になったりと気分が大きく揺れたが、なぜそうなるのか見当もつかない様子であった。彼女は夕方に近づくと気分が悪くなるようで、夜、床につくころには気分はかなりひどく落ち込んでいた。それに加えて、毎晩4時間ぐらいしか眠れず、一旦目が覚めると数時間眠りに戻ることができなかった。時に、ベッドに横になり、「物思い」にふけったり、起き上がって、心配事から逃れ、気分を変えようと何かしてみることもあった。ところでフリードハイム博士と面接をする3週間前に、彼女は息子夫婦宅に泊まりに行く予定だった。二人が仕事に戻れるように、赤ん坊の世話をするつもりだったのだ。彼女は数ヶ月前からこの宿泊を計画していたが、出発する日が1週間以内に近づくと、強い恐怖感を感じるようになった。そのうち切羽詰まったような気持ちになり、出発する11時間前にこの訪問を取り止めてしまった。二人の手伝いをする代わりに、1ヶ月の家政婦雇用やその他にかかる費用をもち、息子夫婦がなんとかスタートを切れるように計らうことで、いくらか気持ちが楽になったが、それでも自分のしたことに罪悪感をもち、恥ずかしくもあった。

彼女は仕事において時間の自由がきいたが、誰にも会いたくないと感じ、人と接触するのを恐がるようになった。もう1ヶ月以上に渡り、必要最小限の仕事しかやらなかった。

「私はどうしたんだろう」と彼女は自問した。

そのとき彼女は、近年2度に渡り、ひどい悲しみに苦しみ、それに対処するのが困難だったことを思い出した。

3年前、ドローシーの夫のラリーが心臓発作で突然この世を去った。二人は、35年のあいだ、安定し、愛し合う関係を維持し、性的にも満たされていた。二人はまさに黄金期を迎えようとするときだった。二人とも仕事が成功し、経済的な安定も得られ、子供たちは結婚し、自立していった。彼女は二人が健康だと考えていたのだが、突然それは崩れたのだった。

ラリーの死の3週間後、ドローシーの母親、バーバラが肝臓ガンの診断を受けた。その5ヵ月後バーバラは他界した。

ドローシーは、自分の世界がすさまじい音とともに崩れ去ろうとしていると感じたが、なんとか耐えた。

ドローシーが大学院に通うとき娘のアンを生んだが、アンが生まれた後、彼女は生活への対処が困難を感じて「産後の抑うつ」を煩った。彼女はこの抑うつを彼女の学業が再び中断されたこと、2人目の子供ができたこと、すでに圧迫された経済状況にあることなどに圧倒された状況のせいだと考えた。彼女によると、フリードハイム博士と話すまで、その困難な時期のことを思い出すことは無かったという。



これまでの面接の経緯

初回面接


初回面接において、話しやすいところから問題について話すようにとドローシーに求めたところ、彼女はおよそ6週間に渡り「落ち込み」、よく寝られず、気分が揺れ動いたと話した。私は彼女に、現在の仕事、家族、興味、生活環境について話してもらったあと、主訴と関連する情報を出来る限り多く引き出し、彼女が問題の原因についてどのような推測をしているか尋ねた。すると彼女は原因について心当たりは全くなく、突然このような状態になったと混乱を示した。

私は、彼女の問題は、セラピーにおいて対処できると保証し、彼女がセラピーに来たことは、賢明で、勇気のあることだと伝え、症状が急にはじまったことと、これまで良好な精神健康歴を維持してきたことから、治療後の経過は良好であると予想されるが、問題の原因を見定めてそれについて話し合っていく必要があると示唆した。そして今後1週間に一度のペースで何度か面接を重ね、12回程度の面接を経て、症状がどこまで改善できたか見ていこうと伝えた。

ここで私が面接の具体的な回数を明示しなかったのは、セラピーが終わりなく続くと彼女を驚かせたくなかったし、逆に自分が全ての答えを知っており簡単に治せるのだという印象を与えたくなかったからである。



第2回面接

第2回の面接では、まずこの1週間がどうであったか、症状に変化はあったかを尋ねた。そのあと個人歴の情報を集めることに戻り、彼女の夫の突然の死について、そのあと続いて起こった母の死について学んだ。2年間のあいだに、彼女は3人の重要な家族成員を失ったことを話した。

彼女が二人目の子供が生まれ退院するときに体験した落ち込んだ気持ちについて話したので、私はこれが現在の問題と関係しているだろうかと尋ねた。そして、現在の抑うつのはじまり(初孫の面倒を見ることを予定していた)と二人目の子供が生まれたときの体験とのあいだにつながりがあるかもしれないと示唆した。

彼女はこの二つの出来事のあいだに多くの類似点、たとえばその出来事のせいで彼女の計画やライフスタイルが狂い、精神的な負担が増えたことなど、を発見した。



第3回面接

第3回面接までに症状は多少悪化し、彼女は幾日かとても辛い晩を送った。その週に私に電話(必要ならするようにと私が仕向けた)して投薬を頼みそうになったこともあった。そこで、これらの気付くことが出来る変化は、彼女の感情や行動が流動化したことを示し、ここで記憶や感情について話し合うことによって起こされたのかもしれないと伝えた。

もし、子供の流産のあとのうつと今回の抑うつとのあいだにつながりがあるならば、今回の抑うつも何らかの心配事によって悪化したのではないかと示唆した。また、母親の死と夫の死が次々と起こったことにより、自然な悲哀の過程が妨害されたのではないかと軽くほのめかした。さらにその体験は、身ごもった子供が生まれることにより、自分の身体の一部となっていた子供を喪失したことと、子供が生まれて負担が増えるだろうと予期したことに関係しているのではないか、ともほのめかした。すると彼女自身も、夫の死のあとすぐに適応したことに驚きを感じており、その死に関わる未解決の感情が存在するのではないかと感じていた。

私は、夫の死が、現在の状況においてどのような役割をもっているのかということを理解するのを手助けするための準備として、次の面接までに行う宿題を提案した。その宿題とは、彼女に夫の思い出の品物、写真、手紙などをかき集めて、1週間のあいだに見直す作業で、さらに次回の面接で私と一緒に見るように写真をもってきてはどうかということを提案した。



第4回面接

ビデオに収録


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